業務の合間や帰宅途中の立ち寄りをどう考えるか
例えば、お客様への訪問の合間に中途半端な時間ができてしまい、会社に戻るほどの時間はないため、コンビニに立ち寄っていたとします。厳密にいえば、買い物そのものは業務ではありません。しかし、こうした時間ですら仕事をするべきだ、業務時間内で待機しているのだからコンビニで時間を過ごすのはおかしい、とするのは厳しすぎるかもしれません。
なお、会社の指示に従って次の訪問先へ向かうまで待機している時間は、状況によっては労働時間に該当します。コンビニへの短時間の立ち寄りがあったからといって、その時間が当然に労働時間から除外されるわけではありません。
また、直行直帰が当たり前の仕事の場合、終業後にスーパーで買い物をしてから帰宅することもあるでしょう。これも業務目的ではない立ち寄りですが、こうした行動まで厳密に管理することは難しく、人情的にはその程度は黙認するという会社もあるかもしれません。
「黙認」と「一定の範囲で認める」は分けて考える
ただし、社用車の私的利用を黙認することと、会社として一定の範囲で利用を認めることは、分けて考えた方がよいでしょう。規程上は一切禁止としているにもかかわらず、実際には管理職も含めて私的利用を黙認している状態では、事故やトラブルが発生した際に会社の管理方針が曖昧になります。
例えば、帰宅途中の短時間の買い物は認める一方で、休日のレジャーや家族の送迎などは認めない、といった線引きを設ける方法もあります。その場合も、利用できる範囲や条件を規程や運用ルールで明確にしておくことが望ましいでしょう。
税務上の問題:ガソリン代を自己負担すれば解決するとは限らない
社用車の業務利用に必要なガソリン代や維持費などは、通常、会社の経費として処理されます。しかし、従業員の私的利用にかかった費用まで、当然に業務上の経費として取り扱えるわけではありません。私的利用の内容や費用負担の方法によっては、従業員への経済的利益として給与課税などの検討が必要になる場合があります。また、会社が従業員の私的利用を認めている場合には、その利用実態に応じた会計・税務処理が必要になることがあります。
では、従業員がプライベートで使用したガソリン代を自分で支払っていれば、問題はないのでしょうか。ガソリン代を自己負担していれば、会社が負担する私的利用分の費用は減ります。しかし、社用車には車両の減価償却費やリース料、保険料、整備費など、ガソリン代以外にも費用が発生しています。そのため、ガソリン代だけを自己負担すれば、税務上の問題がすべて解消するとは限りません。
なお、法人が保有する車両について、私的利用があったという理由だけで減価償却費の全額が直ちに経費として認められなくなるわけではありません。具体的な利用状況や費用負担、従業員への経済的利益の有無などを踏まえて判断する必要があります。
保険上のリスクと事故時の会社の責任
社用車に加入している自動車保険が、私的利用中の事故についても補償するかどうかは、契約内容によって異なります。業務使用を前提とした契約であっても、私的利用中の事故が直ちに補償対象外になるとは限りません。一方で、運転者の範囲や年齢条件、使用実態の申告内容などによって、補償に影響する場合があります。そのため、私的利用を認めるのであれば、事前に保険会社や代理店へ補償範囲を確認しておく必要があります。運転者の範囲については「社用車を従業員の家族が運転してしまったら」も参考にしてください。
また、社用車で事故が起こった場合には、民法上の使用者責任や、自動車損害賠償保障法上の運行供用者責任などにより、会社が損害賠償責任を負う可能性があります。私的利用中の事故であっても、会社が車両を管理していた状況や、利用を認めていたかどうかなどによって、会社側の責任が問われる可能性があります。社用車を私的に利用していたからといって、会社が必ず責任を免れるわけではありません。
方針を決め、規程と運用を一致させる
総務としては、私的利用を一切禁止するのか、業務に付随する軽微な立ち寄りは認めるのか、一定の条件で私的利用を許可するのかを整理しておく必要があります。そして、その方針に合わせて、車両管理規程、保険契約、費用負担、事故時の報告体制などを確認しておくことが重要です。社用車の基本的な利用ルールについては「社用車の運転・使用ルール」も参考にしてください。
社用車の利用を厳格に管理することと、従業員の行動を必要以上に制限することは同じではありません。実態に合わない厳しい規程を作って黙認するよりも、許容する範囲を明確にし、その範囲に応じたリスク管理を行う方が現実的かもしれません。
確認ポイント
- 社用車の私的利用について規程があるか
- 直行直帰や帰宅途中の立ち寄りをどう取り扱うか
- 私的利用を認める場合、利用範囲や申請方法が明確か
- ガソリン代や維持費などの費用負担が決まっているか
- 私的利用による経済的利益の税務処理を確認しているか
- 自動車保険の補償範囲や運転者条件を確認しているか
- 事故発生時の報告方法や会社・従業員の負担について整理しているか
こんなケース、どうする?
営業担当者が顧客訪問の合間にコンビニへ立ち寄っていた
短時間の立ち寄りであれば、直ちに問題とする必要があるとは限りません。業務への影響や会社の車両利用ルールを確認し、許容する範囲を明確にしておくとよいでしょう。なお、待機時間が労働時間に該当するかどうかは、会社の指揮命令下にあるかなど、実態に応じて判断します。
直帰する従業員がスーパーで買い物をしていた
帰宅途中の軽微な立ち寄りを認めるかどうかは、会社の運用方針によります。認める場合には、休日の利用や大幅な寄り道などとの線引きを検討します。また、事故が起きた場合の保険上の取り扱いも確認しておく必要があります。
社用車を休日の買い物やレジャーに使っていた
会社が許可していない場合には、社内規程に基づいて事実確認と指導を行います。私的利用を許可する場合には、費用負担、保険の補償範囲、事故時の対応などを事前に整理しておく必要があります。
私的利用分のガソリン代を従業員が自己負担している
ガソリン代を自己負担していても、車両の維持費や保険料など、会社が負担する費用は残ります。私的利用の実態に応じて、税務上の取り扱いや費用負担の妥当性を確認します。
私的利用中に社用車で事故を起こした
まず、負傷者の救護や警察への通報など、必要な事故対応を行います。そのうえで、保険会社へ連絡し、補償範囲を確認します。私的利用中であっても、会社が損害賠償責任を負う可能性があるため、会社の責任がないと即断しないことが重要です。
規程では私的利用を禁止しているが、実際には黙認されている
規程と実際の運用が一致していない状態です。会社としてどの範囲まで許容するのかを改めて判断し、必要に応じて規程や運用方法を見直します。黙認を続けるよりも、利用できる範囲と禁止事項を明確にしておく方が、事故やトラブルへの対応がしやすくなります。