会社用アカウントの共用は利用規約に注意

では、会社用の電子書籍アカウントを作り、それを従業員が共用する方法はどうでしょうか。一般向けの電子書籍サービスでは、購入した書籍の利用権がアカウントに紐づいていることが多く、複数のデバイスで閲覧できる場合もあります。

しかし、複数のデバイスで閲覧できることと、複数の従業員でアカウントを共有してよいことは別の問題です。サービスによっては、アカウントの貸与や第三者との共有が利用規約で禁止されています。会社が購入したからといって、従業員が自由にアカウントとパスワードを使い回してよいわけではありません。

タブレットごと貸し出す方法

可能性があるとすれば、会社用のタブレットを用意し、電子書籍を閲覧する際にはタブレットごと貸し出す方法です。ただし、これも利用する電子書籍サービスの規約によります。会社所有の端末であっても、複数人で同じアカウントを利用することが認められていなければ、規約上の問題が残ります。

また、タブレットを貸し出すのであれば、紙の書籍を貸し出すのとそれほど変わりません。端末の購入費用や故障対応、紛失防止など、デバイスの管理コストが増えるというデメリットもあります。

法人向けの電子図書館サービスを活用する

現実的な方法の一つは、法人向けの電子図書館サービスを活用することです。例えば、BOOK TECH bizでは、会社が電子書籍のライセンスを購入し、従業員に貸し出す仕組みが用意されています。書籍は1冊につき1ライセンスとして管理され、購入したライセンス数に応じて、同時に貸し出せる人数が決まります。

貸出や返却、予約の管理ができ、従業員のアカウントについても一時停止や削除が可能です。一般向けの電子書籍アカウントを複数人で使い回すのではなく、法人向けサービスが定めた利用方法に従って書籍を貸し出せるわけです。

また、対応するサービスであれば、従業員が自分のPCやスマートフォンから閲覧することもできます。ただし、個人のデバイスから閲覧できることは、必ずしも会社にとってメリットだけではありません。会社が貸与した端末だけで閲覧させたい場合には、端末を限定する機能があるかを別途確認する必要があります。また、退職時にアカウントを停止できる場合でも、ダウンロード済みの書籍データをその後も閲覧できるかどうかなど、サービスごとの仕様を確認しておく必要があります。

費用と取り扱い書籍を事前に確認する

注意点としては、紙の書籍や個人向け電子書籍に比べて費用が割高になる場合があることです。BOOK TECH bizの場合、公式サイトでは法人向け書籍ライセンスの価格が個人向けの3〜4倍程度と案内されています。そのため、利用人数や貸出回数によっては、従業員ごとに購入した方が安くなる可能性もあります。

また、幅広い分野の書籍が揃っているとはいえ、専門性の高いニッチな分野の書籍については、取り扱いがない可能性もあります。会社が購入したい書籍が法人向けサービスで提供されているかどうかは、導入前に確認しておきたいところです。

会社が利用権を管理できる仕組みを検討する

会社としては、本来インプットしてほしい情報について、「紙の書籍だと読みづらい」という理由で敬遠されてしまうことは避けたいはずです。一方で、従業員の希望に応じて電子書籍を購入するだけでは、費用やライセンス、退職後の利用権限など、新たな管理上の問題が発生します。

電子書籍を貸し出す場合には、単に購入する方法だけでなく、会社が利用権を管理し、必要に応じて別の従業員へ貸し出せる仕組みを検討することが重要です。

電子なら読みたいという従業員の要望にどう応えるかを一考することで、従業員の知識やスキルの向上につながる可能性があります。

確認ポイント

  • 会社が購入した電子書籍を複数の従業員で利用できる契約になっているか
  • アカウントやパスワードの共有が利用規約に違反しないか
  • 会社が購入した書籍の利用権を管理できるか
  • 従業員の退職時に閲覧権限を停止できるか
  • 私物端末での閲覧を認めるか、会社貸与端末に限定するか
  • 必要な専門書が法人向けサービスで取り扱われているか
  • 個別購入と法人ライセンスのどちらが費用面で合理的か

こんなケース、どうする?

会社の電子書籍アカウントを複数の従業員で共有してよい?

利用する電子書籍サービスの規約を確認します。複数のデバイスで閲覧できるサービスであっても、複数人でのアカウント共有が認められているとは限りません。会社が購入したアカウントであっても、規約に反する利用は避ける必要があります。

会社のタブレットに電子書籍を入れて貸し出してよい?

電子書籍サービスの利用規約で認められているかを確認します。端末ごと貸し出す場合でも、利用者の交代やアカウント共有が制限されている可能性があります。また、端末の紛失や故障など、書籍以外の管理負担も考慮する必要があります。端末を紛失された場合の対応については「会社の備品を紛失した従業員に弁償させてよい?」も参考にしてください。

従業員が自分のスマートフォンで読みたいと言っている

法人向け電子図書館など、個人端末からの閲覧を認めているサービスを検討します。ただし、会社貸与端末に限定したい場合には、サービス側で端末制限が可能かを確認します。

退職した従業員が電子書籍を読み続けられないようにしたい

会社が利用者のアカウントや貸出権限を管理できるサービスを選びます。退職時にアカウントを停止・削除できるか、ダウンロード済みの書籍についても閲覧できなくなるかを確認しておきます。

法人向け電子図書館に必要な専門書がない

出版社や販売元が法人向けライセンスを提供していないか確認します。利用できる法人向けサービスがない場合には、紙の書籍での貸出や、従業員ごとの電子書籍購入などを比較して判断します。

電子書籍を全社員分購入すると費用が高くなる

同じ書籍を何人が、どの程度の頻度で利用するかを確認します。同時に閲覧する必要がないのであれば、法人向け電子図書館で少数のライセンスを購入し、順番に貸し出す方法が考えられます。ただし、法人ライセンス自体が割高な場合もあるため、利用人数や利用期間を踏まえて比較します。