1. 本当にワークフローシステムが必要か
まず考えたいのは、本当に専用のワークフローシステムが必要なのかということです。
例えば、
- 稟議書や申請書が数種類しかない
- 承認経路が単純
- 利用人数が少ない
このような企業であれば、GoogleフォームやGoogle Apps Script(GAS)でも十分に運用できるケースがあります。
一方で、
- 従業員数が増え、申請書が増加してきた
- 部署や役職によって承認経路が複雑になった
- 外出先からスマートフォンで承認したい
- 証憑を添付しAI-OCRで自動入力したい
- 会計システムや人事システムと連携したい
このような要件が出てきたタイミングでは、専用のワークフローシステムを検討する価値があります。
ワークフローシステムは導入すること自体が目的ではありません。現在の運用では解決できない課題があるかどうかが、導入を判断する最初のポイントです。
2. ベンダーへ問い合わせる前に整理すること
製品比較よりも先に、自社の要件を整理します。
例えば、
- 対象となる申請書の種類
- 年間の申請件数
- 利用人数
- 承認者の人数
- 承認経路
- 添付ファイルの有無
- 他システムとの連携
- 将来的に追加したい申請
などです。
ベンダーは必ず利用人数や申請内容を確認します。ライセンス体系や推奨規模が異なるためです。しかし、ベンダーは営業でもあります。そのため、
「その規模なら弊社がおすすめです。」
という提案だけでは判断できません。重要なのは、
- 標準機能で対応できるのか
- カスタマイズが必要なのか
- 将来の拡張にも対応できるのか
まで確認することです。
また、現状だけでなく、2〜3年後の会社の姿も想定しておきます。例えば、
- 利用人数が増える予定
- 新しい申請を電子化する予定
- 他システムとの連携を考えている
などです。現時点で最適なシステムが、2〜3年後も最適とは限りません。将来を見据えた要件整理をしておくことで、導入後のシステム変更を減らすことができます。
3. 費用対効果は総務が算出する
システム導入では、多くの場合、費用対効果の説明を求められます。
例えば、初期費用:50万円、ランニングコスト:年間150万円とします。一方で、年間約500時間の作業工数が削減できると仮定します。年間標準労働時間を約1,600時間、1人あたりの年間人件費を500万円とすると、
500時間 ÷ 1,600時間 × 500万円
で、約156万円相当の削減効果になります。この試算だけを見ると、ランニングコストを考慮すると費用対効果は限定的です。
一方で、年間1,000時間程度の削減が見込めるのであれば、約313万円相当の削減効果となり、導入効果は大きく変わります。
もちろん、
- AI-OCRによる入力削減
- 内部統制
- 不正防止
- 監査対応
- ペーパーレス化
など、工数だけでは測れない効果もあります。しかし、
「年間何時間削減できるのか」
という前提条件を整理するのはベンダーではなく総務の役割です。そのためには、
- 現在どこで時間がかかっているのか
- ボトルネックはどこなのか
- システムで本当に解決できるのか
を事前に調査しておく必要があります。ベンダーは、そのボトルネックを自社製品で解決できるかを提案する立場です。削減時間そのものを保証してくれるわけではありません。
なお、アウトソーシングを検討する場合も、委託前に業務量を可視化しておく必要があるという点は共通しています(BPO会社に相談する前に準備しておきたいことについてはこちらの記事)。
4. Google Workspace・GASで十分なケース
Google WorkspaceとGASでも、ワークフローを構築することは可能です。
例えば、
- Googleフォーム
- Gmail通知
- スプレッドシート
- Google Drive
を組み合わせることで、
- 稟議
- 備品購入申請
- 休暇申請
- 身上変更
- 入退社申請
など、多くの申請は実現できます(GASによるミニワークフローの構築例についてはこちらの記事)。
一方で、
- 複雑な承認分岐
- AI-OCR
- 会計システムとの自動連携
- 電子契約との連携
- 高度なアクセス権限管理
などは、追加開発が必要になったり、専用システムの方が適しているケースもあります。
重要なのは、
「GASでできるか」ではなく、「自社に必要な機能か」
という視点で判断することです。
5. GASとワークフローシステムを併用する場合の注意点
「簡単な申請はGAS、複雑な申請は専用システム」という運用を考える企業もあります。しかし、この方法はあまりおすすめできません。
承認者情報や組織情報が複数のシステムへ分散すると、
- 異動時の設定変更
- 組織改編
- 退職者の削除
- 問い合わせ対応
などの管理負荷が増えてしまいます。運用開始時は問題なくても、数年後には
「どちらのシステムが正しいのか分からない」
という状態になることもあります。申請基盤は、できる限り一つに統一した方が運用しやすいでしょう。
まとめ
ワークフローシステムの導入は、製品比較から始まるわけではありません。まず総務が行うべきことは、
- ワークフローシステムが本当に必要なのかを判断すること
- 自社の要件を整理すること
- 将来の運用まで見据えること
- 費用対効果を試算すること
です。これらが整理できて初めて、各ベンダーを同じ条件で比較できます。
比較する前に比較項目を決めること。それが、ワークフローシステム導入における総務の最も重要な役割と言えるでしょう。