1. 業務フロー図に含まれる情報
以下は、内定者が入社書類を提出し、入社日を迎えるまでの業務フロー図のサンプルです。
本来の業務フロー図はさらに細かく作成しますが、今回は部署間の責任が分かりやすいよう、シンプルな形にしています。
内定者が内定承諾をすると、人事部が内定者申請フォームへ入力するところから業務が始まり、入社日当日までの書類提出や各部署の対応が進んでいきます。
ここで注目したいのは、図の上部に記載されているデッドラインです。
この期限の中で、
- 誰がボールを持っているのか
- どの部署が責任を持つのか
が一目で分かるようになっています。
例えば、
- 内定承諾後すぐに内定者申請を行うのは人事部
- 入社5営業日前までに必要書類を収集するのは人事部と総務部
- 入社1営業日前までにGoogle Workspaceなどのアカウントを発行するのは情報システム部
- 入社当日にアカウント情報を本人へ案内するのは人事部
というように、業務の流れだけでなく、その時点で責任を持つ部署も明確になります。
2. 業務分掌だけでは責任の所在は分からない
部署の責任範囲を示すものとして、「業務分掌」があります(業務分掌についてはこちらの記事)。
業務分掌では、
- 人事部は採用・人事管理
- 総務部は庶務・施設管理
など、部署ごとの役割を定義しています。
しかし、実際の業務では複数の部署が関わります。例えば入社手続きでは、
- 人事
- 総務
- 情報システム
- 経理
などがそれぞれのタイミングで業務を担当します。業務分掌だけでは、
「いつ」「どの部署が」「どこまで責任を持つのか」
という時系列までは表現できません。一方、業務フロー図であれば、業務の進行に合わせて責任部署がどのように移り変わるのかを、一目で把握することができます。
3. 総務は「最後の砦」になりやすい
ところで、上図にある総務の仕事は、本当に総務が担当すべき業務でしょうか。
例えば書類の不備確認は、本来であれば書類を受け取った人事部が確認し、不備があればすぐに内定者へ連絡した方が効率的です。しかし、年金事務所やハローワークへ提出する書類は不備があると差戻しになるため、
「総務でもう一度確認しよう」
という運用が始まります。すると、
- 履歴書
- 同意書
- 緊急連絡先
- 各種申請書
など、本来人事部が確認すべき書類まで総務が確認することが当たり前になってしまうケースがあります。
何度お願いしても改善されず、
「自分たちがやった方が早い」
という状況になり、そのまま総務の仕事として定着してしまうことは少なくありません。
総務は、このような「最後の砦」として機能する部署です。その結果、本来は他部署が責任を持つべき業務まで、いつの間にか総務の担当になってしまうことがあります。
業務フロー図に本来の責任部署を書き記しておけば、
「この工程は本来こちらの担当ですよね」
という根拠を持って業務を見直すことができます。
業務改善とは、業務を効率化するだけではありません。本来あるべき責任の所在を整理し、不要な業務を抱え込まないことも重要な改善の一つです。
4. 業務フロー図は粒度によって使い分ける
業務フロー図には一種類しかないわけではありません。目的に応じて粒度を変えることが重要です。
今回紹介したような業務フロー図は、部署間の連携や責任の所在を把握するための比較的シンプルなLevel2のフロー図です。一方、実際の業務で使用する場合は、もう少し細かいLevel3程度の粒度が使いやすいでしょう。例えば総務業務であれば、
- 年金事務所への資格取得届作成
- ハローワークへの雇用保険手続き
- 市区町村への各種届出
- 社内システムへの登録
- アカウント発行
といった作業まで記載した業務フロー図になります。一方、複数部署との連携や責任分担を確認したい場合は、今回のようなLevel2程度の粒度の方が全体像を把握しやすくなります。
業務フロー図は、細かく書けば良いというものではありません。
「誰に見せるのか」
「何を確認したいのか」
によって粒度を使い分けることが重要です。
まとめ
業務フロー図は、業務の流れを整理するためだけの資料ではありません。「いつ」「誰が」「どこまで責任を持つのか」を可視化し、部署間の役割を明確にするための重要なツールです。
総務は業務の最後を担うことが多く、責任が曖昧なまま業務を抱え込みやすい部署でもあります。一度業務フロー図を作成してみると、本来は他部署が担当すべき業務や、改善できる業務が見えてくるかもしれません。