善意の目的でも開示の理由にはならない

「本人をケアしたい」という善意の目的であっても、本人の同意なく高ストレス者の氏名や検査結果を開示してよい理由にはなりません。総務が個人結果を保有していないのであれば、ベンダーに対して氏名の開示を要求するべきではありません。ベンダーも、本人の同意など適切な提供根拠がない限り、会社から強く要求されたとしても開示することはできません。

また、本人が会社への結果提供に同意した場合でも、上長や役員が自由に閲覧できるということではありません。提供された情報は、同意の範囲やあらかじめ定められた取り扱い方法に従い、必要な担当者が必要な範囲で取り扱うことになります。なお、高ストレス者と判定された従業員に対しては、実施者等から医師による面接指導の申出を勧奨することができます。運用によっては、会社が高ストレス者の氏名を把握しないまま、本人への案内や勧奨を行うことも可能です。

個人を探すのではなく、職場環境に働きかける

高ストレス者が多い部署が判明した場合、会社として何もしなくてよいわけではありません。特定の高ストレス者を探し出して個別に対応しようとするのではなく、まずはその従業員が所属する部門やチームの労働環境に働きかけることが考えられます。例えば、業務量や残業時間、人員配置、管理職のマネジメント、職場内のコミュニケーションなどを確認します。また、従業員が自ら相談できる窓口を周知し、産業医等による相談や面接指導につながる仕組みを整えておくことも重要です。

本人から面接指導の申し出があった場合には、会社として必要な対応を行います。個人のストレスチェック結果を把握できないからといって、会社が職場環境の改善を行えないわけではありません。従業員に安心して回答してもらうための約束を、会社側の都合で破ってしまっては、ストレスチェック制度そのものへの信頼が失われかねません。総務としては、個人情報の取り扱いに関する約束を守りながら、会社としてできる労働環境の整備や改善を進めることが重要です。

ストレスチェックを自社で作成・運用する場合の注意点についてはストレスチェックの自作はおすすめしないワケで整理しています。

確認ポイント

  • ベンダーが従業員に対して説明している個人情報の取り扱い内容を把握しているか
  • 本人の同意なく個人結果を会社側へ提供していないか
  • 集団分析結果から個人が特定されるおそれはないか
  • 高ストレス者への面接指導の勧奨や申出の仕組みが整っているか
  • 上長や役員からの開示要求に対する対応方針が決まっているか
  • 集団分析結果を職場環境の改善につなげているか

こんなケース、どうする?

上長から「高ストレス者をケアしたいので名前を教えてほしい」と言われた。

ベンダーが個人の結果を会社に開示しないと説明して実施している場合、その約束を理由に氏名の開示を断ります。本人の同意なく個人結果を提供することは、原則として認められません。部下を心配している場合であっても、個人の特定ではなく、部署全体の業務量や労働環境の確認を依頼します。

役員から「経営判断に必要だから高ストレス者の一覧を出してほしい」と言われた。

経営判断に必要という理由だけで、本人の同意なく個人結果を開示することはできません。個人が特定されない集団分析結果や、職場環境の改善に関する課題を報告します。

ベンダーに依頼すれば、高ストレス者の氏名を教えてもらえる?

本人の同意など適切な提供根拠がない限り、ベンダーから会社へ個人の検査結果を提供することはできません。特に、個人の結果を会社へ開示しないと説明して受検を促している場合、会社側の要求によってその取り扱いを変更することはできません。

高ストレス者が多い部署が判明した。

個人を特定しようとするのではなく、部署全体の労働環境を確認します。業務量、長時間労働、人員配置、管理職の対応などを調査し、改善の必要性を検討します。

高ストレス者本人から面接指導の申し出があった。

本人の申し出に基づき、医師による面接指導を実施します。面接指導の結果を踏まえて医師の意見を聴き、必要がある場合には、労働時間の短縮や業務内容の変更などの就業上の措置を検討します。この場合は、本人の申し出に伴って法令上認められる範囲で情報を取り扱うため、本人の同意なくベンダーから氏名を聞き出すこととは区別して考えます。