1. ストレスチェックとは

ストレスチェックとは、Webアンケートなどを用いて、従業員の心理的な負担(ストレス)の状況を把握するための制度です。

高ストレスと判定された従業員は、希望に応じて医師による面接指導を受けることができます。

また、集団分析などを通じて、職場環境に課題があると考えられる場合は、その改善につなげることも制度の目的の一つです。

さらに、従業員自身がストレス状態に気付き、セルフケアを進めることも目的に含まれています。

2. ストレスチェックの実施

Googleフォームなどを使用すると、アンケート形式のストレスチェックを社内で構築すること自体は容易です。

しかし、ストレスチェックは心理学や統計学の研究に基づいて作られた制度です。質問項目も学術的な検証を経て設計されており、「聞きたいことを聞けばよい」というものではありません。

また、同じ会社の従業員だからこそ、自分のメンタルヘルスの状態を知られたくないと考える方も少なくありません。総務や人事に結果を見られる可能性があると思うと、本音で回答しづらくなってしまうこともあるでしょう。

そのため、専門性やプライバシー保護の観点から、多くの企業では外部業者へ委託して実施しています。

一方、自社で実施したい場合には、厚生労働省から「厚生労働省版ストレスチェック実施プログラム」が無償公開されていますので、まずはこちらの利用を検討するとよいでしょう。

また、外部業者へ委託する場合は、予算だけでなく、

  • Webか紙かなどの実施方法
  • 匿名性の確保
  • 高ストレス者へのフォロー体制

なども確認し、自社に合ったサービスを選ぶことが重要です。

【コラム】

以前、タレントマネジメントシステムに付属しているストレスチェック機能の分析を依頼されたことがあります。

試しに統計的な分析(潜在クラス分析)を行ったところ、非常に教科書的できれいな結果が得られ、「よく設計された質問票だな」と感じました。

後日、営業担当者へ

「この質問票は誰が作ったものですか?」

と尋ねたところ、

「詳しくは分かりませんが、数年前に著名な研究者によって作成されたものと聞いています。」

とのことでした。改めて、ストレスチェックはしっかりとした学術的な裏付けをもとに作られていることを実感した出来事でした。

潜在クラス分析によるストレスチェック結果の分類イメージ図。クラス1(低ストレス群・全体的にストレスが低い)、クラス2(高ストレス群・全体的にストレスが高い)、クラス3(中間群・中程度のストレス)の3つのクラスに分かれて分布している散布図
学術的な統計分析にもとづき設計された質問票だからこそ、きれいな分析結果が得られる

3. 総務が行うべきは全体設計

ストレスチェックの実施前には、次のような事項を決めておく必要があります。

  • ① 経営層への制度説明と法的義務の共有
  • ② 委託業者の選定、予算確保、契約
  • ③ 実施方法(Web・紙、匿名性など)の決定
  • ④ 高ストレス者への面接指導体制(産業医などとの連携)の整備
  • ⑤ 実施時期・実施頻度の決定
  • ⑥ 結果通知方法の決定
  • ⑦ 結果データの保存方法
  • ⑧ 医師からの意見聴取と、必要に応じた就業上の措置の検討
  • ⑨ 集団分析の実施
  • ⑩ 職場環境改善の検討

①②は社内での意思決定が必要になります。

③〜⑦については、委託業者がノウハウを持っていることが多いため、相談しながら進めるとよいでしょう。

⑧についても、産業医との契約がない場合は、委託業者や健康保険組合などへ相談できるケースがあります。

総務が特に対応に苦心しやすいのは、⑨の集団分析と⑩の職場環境改善ではないでしょうか。

4. 環境改善までをフォーカスに入れるかどうかは慎重に

ストレスチェックを実施し、高ストレス者へのフォローを行うことは制度上重要なポイントです。

一方で、集団分析の結果をどこまで職場環境改善へ活用するかは、企業の考え方によって温度差があります。

現在、50人以上の事業場ではストレスチェックを実施したことについて労働基準監督署への報告が必要です。

一方、集団分析そのものや、その結果を用いた職場環境改善については、制度の目的ではあるものの、企業ごとの取り組みに委ねられている部分もあります。

集団分析では個人が特定されない形で結果が提供されるため、部署や職場ごとの傾向を把握することはできます。例えば、

  • 特定部署のストレス傾向が高い
  • 他部署と比較して負荷が大きい

といった傾向は見えてくるかもしれません。しかし、

「なぜその部署のストレスが高いのか」

までは、ストレスチェックだけで判断することは困難です。改善を進めるためには、

  • 離職率
  • 従業員相談窓口の相談内容
  • エンゲージメント調査
  • 人事評価
  • 業務量
  • コミュニケーション状況

など、さまざまな情報を組み合わせて考える必要があります。

つまり、ストレスチェックは職場改善の答えではなく、「改善が必要かもしれない」というサインの一つとして活用するのが現実的でしょう。

さらに言えば、高ストレス・高離職率・低エンゲージメントの部署が見つかったとしても、それをどのように改善するかは別の課題です。経営層の理解、改善担当者(おそらく総務)の推進力、現場の危機感などがそろって初めて、職場改善は動き始めます。

ストレスチェックは、そのための重要な材料ではありますが、それだけで職場環境が改善されるわけではありません。改善活動を始めるきっかけとなる「一つのピース」と考えるのが適切ではないでしょうか。

落ち込む従業員たちと右肩上がりのグラフを背に、総務担当者が1枚のパズルピースを、様々な要素がつながったハイタッチする従業員たちの土台へはめ込もうとしているイメージ図。ストレスチェックが職場環境改善に向けた一つのピースであることを表す
ストレスチェックは、職場環境改善を始めるきっかけとなる一つのピース