「期待と違った」だけでは本採用を見送れない
会社が従業員を解雇する場合には、相応の理由が必要となります。一般的には、客観的に合理的な理由があり、なおかつ社会通念上相当であると認められなければ、解雇は難しくなります。
試用期間中の解雇や本採用拒否については、通常の解雇とは異なる判断が認められる場合もありますが、単に「期待していた人材と違った」という理由だけで、自由に雇用契約を終了できるわけではありません。こうした法的な解説はネット上にも多くありますので、具体的な解雇の可否について判断が必要な場合は、専門家に相談してください。
総務・人事として重要なのは、試用期間だからといって簡単に解雇できない旨を、現場責任者や指導担当者にも周知しておくことです。
「試用期間が終われば自動的にいなくなる」と放置しない
例えば、ある部署に配属された試用期間中の従業員について、その部署の責任者が「あまり仕事にマッチしていないが、試用期間が終われば自動的にいなくなるだろう」と思って放置してしまった場合です。
試用期間の終了が近づいてから、突然「本採用を見送りたい」と人事へ相談されても、すでに対応が難しくなっている可能性があります。十分な指導や改善の機会を与えておらず、具体的な問題点の記録も残っていなければ、会社として本採用拒否の合理性を説明することが難しくなるためです。結果として、解雇の有効性をめぐる労働紛争に発展する可能性もあります。
そのため、試用期間中に明らかなミスマッチがあると思われた場合には、早い段階から次のような対応をしておくことが重要です。
- 指導や教育を行い、その内容と本人の反応を記録しておくこと
- 繰り返し発生するミスについて、発生日時や内容、改善状況を記録しておくこと
- 著しい能力不足によって業務上の支障や損害が生じた場合、その具体的な事実を記録しておくこと
- 問題点を本人に伝え、改善の機会を設けること
- 試用期間の終了を待たずに、人事と現場責任者で対応を協議すること
記録は解雇の材料集めではない
ただし、これらの記録を残しておけば解雇できるというわけではありません。重要なのは、解雇するための材料を集めることではなく、会社として必要な指導や教育を行い、それでも改善が難しいのかを客観的に判断できる状態にしておくことです。また、本人の能力だけでなく、会社側の教育体制や業務の割り当てに問題がないかも確認する必要があります。
人事、現場責任者、指導担当者は十分に連携を取り、試用期間中のスキルマッチを確認するとともに、採用時に申告された経歴やスキルと実際の能力に大きな相違がないか、明らかなミスマッチがあった場合にはどう対応するかを共有しておく必要があります。
試用期間は、会社が従業員を一方的に選別するためだけの期間ではありません。実際の業務を通じて適性を確認し、必要な教育や指導を行う期間でもあります。試用期間の終了直前になって初めて問題が表面化することのないよう、現場任せにしない運用が重要です。
注意・指導の内容を記録に残す運用については遅刻・欠勤が多い従業員でも整理しています。
確認ポイント
- 試用期間中でも自由に解雇できるわけではないことを、現場責任者が理解しているか
- 試用期間の長さや本採用の判断基準が、就業規則や労働契約で明確になっているか
- 業務上の問題点について、具体的な事実を記録しているか
- 本人に問題点を伝え、必要な指導や改善の機会を設けているか
- 人事と現場責任者が試用期間中から情報共有しているか
- 本採用拒否を検討する場合、専門家への相談を含めて慎重に判断しているか
こんなケース、どうする?
「試用期間が終わるので、本採用を見送りたい」と現場責任者から言われた。
まず、本採用を見送りたい理由と、その根拠となる具体的な事実を確認します。「仕事が遅い」「職場に合わない」といった抽象的な評価だけでなく、どのような問題があり、どのような指導を行い、改善状況がどうだったのかを整理します。試用期間中の本採用拒否も解雇に当たるため、現場責任者の判断だけで進めないようにします。
試用期間中に何度も同じミスを繰り返している。
ミスの内容や頻度、業務への影響を具体的に記録します。そのうえで、業務の教え方や指示の内容に問題がなかったかを確認し、必要な指導を行います。単にミスの回数を数えるのではなく、改善の機会を設けてもなお業務に支障が生じているのかを確認することが重要です。
試用期間中であれば、解雇予告は不要?
試用期間中であっても、常に解雇予告が不要になるわけではありません。労働基準法上、試の使用期間中で雇入れ後14日以内の労働者については、原則として解雇予告制度の適用除外となります。ただし、14日以内であれば自由に解雇できるという意味ではありません。解雇予告が必要かどうかと、解雇そのものが有効かどうかは別の問題です。
試用期間が終了するまで、問題のある従業員を様子見してよい?
改善の状況を確認するために一定期間様子を見ることは考えられます。しかし、問題点を本人に伝えず、指導も行わないまま試用期間の終了を待つことは避けるべきです。本採用の可否について問題が生じそうな場合は、早い段階で人事と現場責任者が協議し、対応方針を決めておきます。