1. もちろん円満退職ばかりではない
「終身雇用」という言葉も過去のものとなり、転職は当たり前の時代になりました。
人材の流動性は以前とは比較にならず、従業員の入社と退職は企業の日常業務と言ってもよいでしょう。
採用から入社、研修までは人事部が担当する一方で、退職に関する実務は総務が担っている会社は少なくありません。
退職の理由は様々です。
- キャリアアップや転職など前向きな理由
- 定年退職
- 家庭の事情
- 病気
- 会社や仕事内容、人間関係、待遇への不満
ステップアップのための退職であれば、気持ちよく送り出したいものです。
しかし、どのような理由であっても、最後まで退職者と関わるのは総務であることが多いでしょう。
引継ぎも終わり、必要な手続きを済ませたうえで円満に退職されるのであれば、大きな問題はありません。
一方で、
- 突然出社しなくなった
- 会社と対立したまま退職した
- 退職代行から突然連絡が入った
というケースでは、その後の手続きが一気に複雑になることがあります。
2. 退職届を受け取って終わりではない
退職は、退職届や退職願を受理して終わりではありません。
退職者一人に対しても、
- 総務
- 人事
- 労務
- 情報システム
- 経理
- 所属部署
など、多くの部署が関わります。
総務は、それぞれの担当部署と連携しながら、退職手続きを円滑に進める調整役になることも少なくありません。
例えば現場では、
- 最終出勤日の調整
- 有給休暇の消化
- 引継ぎ状況の確認
などが必要になります。
情報システム部門では、
- Google WorkspaceやMicrosoft 365のアカウント停止
- VPNや各種SaaSライセンスの停止
- メール転送設定
- データの引継ぎ
などの作業が発生します。
本人への対応としても、
- PCやスマートフォンなど貸与物の返却
- 名刺の返却
- 健康保険証の返却
- 社員証・入館証の返却
- 確定拠出年金(DC)などの案内
- 秘密保持義務の再確認
- 退職証明書の発行(希望者)
- 立替金や仮払金の精算
- 定期券などの精算
- 給与・退職金の支払い
など、多くの対応が必要になります。
さらに労務上も、
- 雇用保険資格喪失届
- 健康保険・厚生年金資格喪失届
- 離職票の作成・交付(希望者等)
- 源泉徴収票の作成
- 住民税の徴収方法変更
など、様々な手続きが続きます。
円満退職であれば、これらは比較的スムーズに進みます。
しかし、退職代行を利用したケースや本人と連絡が取りづらいケースでは、一つひとつの手続きが滞りやすくなります。
3. 退職後も連絡が必要になる
退職後であっても、本人へ連絡しなければならない場面は少なくありません。
例えば、貸与物が返却されていなければ回収しなければなりません。
健康保険証についても返却が必要です。
保険証は退職月の月末頃まで本人が手元に置いているケースもあり、返却が翌月になることも珍しくありません。
また、退職後に転居してしまい、会社が把握していた住所に住んでいないということもあります。
源泉徴収票は退職後に作成・送付することが多いため、送付先が分からなくなると本人へ届けることができません。
近年では退職代行サービスを利用した退職も増えてきました。
多くの退職代行サービスは、退職の意思表示を会社へ伝えるところまでを主な業務としています。
そのため、
- 貸与物の返却
- 書類の受け渡し
- 各種確認事項
などについては、最終的に会社と本人との間でやり取りしなければならないケースも少なくありません。
本人としては会社と極力関わりたくないという事情がある一方で、会社としては情報資産や貸与物を確実に回収しなければならず、総務がその対応に追われることになります。
4. 最後まで丁寧に。それが総務の役割
退職手続きは、退職届を受け取れば終わりという仕事ではありません。
貸与物の回収、社会保険や雇用保険の手続き、源泉徴収票の送付、アカウント停止など、多くの業務が退職後まで続きます。
しかも、それらは総務だけでは完結せず、人事・情シス・経理・所属部署など、複数の部署と連携しながら進める必要があります。
華やかな仕事ではありませんが、会社を円滑に送り出すためには欠かせない仕事です。
また、退職する従業員にとっても、「最後に接した会社の印象」を決める重要な場面になることがあります。
入社時だけでなく、最後まで丁寧に対応すること。
それもまた、総務という仕事の大切な役割なのではないでしょうか。