1. 請求書は、驚くほどバラバラなルートでやってくる
「請求書を集める」と一言でいっても、実際に届くルートは取引先ごとにさまざまです。
- 郵便で届く紙の請求書
- FAXで送られてくる請求書
- メールに添付されたPDF
- 取引先のサイトへログインしてダウンロードするもの
- EDI(電子データ交換システム)経由で連携されるもの
同じ「請求書」という書類でも、届き方も、形式も、確認すべきポイントもバラバラです。取引先の数だけ窓口があり、総務はそのすべてに合わせて動く必要があります。
2. 集めるだけでも一苦労、そして毎月続く
紙の請求書は開封して仕分けし、FAXは受信漏れがないか確認し、メールは埋もれないよう探し出し、サイトはログインして毎回ダウンロードし、EDIは連携エラーがないかチェックする。
集める段階だけでも、これだけの作業が発生します。
さらに、届いていない請求書があれば取引先へ催促し、金額や内容に不備があれば確認し、ようやく経理へ回せる状態にする。ここまでやって、はじめて「集める」という仕事が完了します。
そしてこの一連の作業は、月末や月初になれば、また同じように繰り返されます。1つ1つは小さな作業でも、積み重なると総務の工数を大きく圧迫します。
3. クレジットカード払いにすれば解決するのでは?
「請求書をなくして、法人カードで決済すればいいのでは」と考える方もいるかもしれません。実際、支払いの一部をカード払いへ切り替えて負担を減らしている企業もあります。
しかし、これだけですべてが解決するわけではありません。
- 対応していない取引先が多い
- 法人カードが使えない場合も
- ガバナンス上、請求書が必要
すべての取引先がカード払いに対応しているわけではなく、稟議や内部統制の都合上、カード払いであっても請求書自体は保管・確認が必要になるケースも珍しくありません。カード払いは有効な選択肢の一つですが、「これさえ導入すれば請求書業務がゼロになる」というものではないのです。
4. ではRPAで自動化すれば?
それなら、サイトからのダウンロードやメール添付の取得をRPAで自動化すればいいのでは、という発想も出てきます。たしかに、うまくはまれば効果はあります。
ただし、実際に運用してみると、次のような壁にぶつかることが少なくありません。
- ログイン認証が厳しくなる
- サイト変更で動かなくなる
- 修正コストがかかる
- 月1回では費用対効果が低い
取引先サイトの多要素認証が強化されればRPAは止まり、サイトのUIが少し変われば処理が失敗します。そのたびに修正が必要になり、月に数回しか動かさない処理のために継続的な保守コストを払い続けることになります。結果として、「自動化したはずが、かえって手間が増えた」ということも起こります。
5. 決定的な解決策がないからこそ必要な「総務の底力」
ここまで見てきたとおり、請求書を集める業務には、「これを導入すれば一気に解決する」という決定的な解決策がなかなか見当たりません。
カード払いにもRPAにも限界があり、結局のところ、取引先ごとの事情に合わせて、人が判断し、確認し、催促し、調整するという地道な作業が残り続けます。
それでも毎月、請求書は滞りなく経理へ渡り、支払いは期日どおりに行われています。それを支えているのは、派手な仕組みではなく、総務担当者が積み重ねている細かな工夫と粘り強さです。取引先ごとの癖を把握しておく、抜け漏れに気づける仕組みをつくっておく、負担の大きい部分だけを小さく自動化しておく。そうした一つひとつの積み重ねが、決定打のない業務を回し続ける力になっています。
このシリーズ「総務の底力」では、こうした「きれいには解決できないけれど、確かに会社を支えている」総務の業務にあえて光を当てていきます。すべてを自動化する話ではなく、Google WorkspaceやGASなどを使いながら、負担の大きい部分だけを少しずつ軽くしていく、そんな現実的な工夫を今後も紹介していきます。