1. 履歴が増えていくことを前提にする
貸与物の管理では、「今、誰が使っているか」だけ分かれば十分というわけではありません。
「過去に誰が使っていたのか」も管理しておかなければ、故障や紛失、ライセンス違反などのトラブルが発覚した際に、証跡を追うことができなくなるからです。
そのため、貸与物管理では履歴が増えていくことを前提とした設計が重要になります。
2. マスタだけで管理すると問題が起こる
例えば、50台のPCを管理するとします。
まずは、それぞれのPCに管理番号を付与し、テプラなどで物理的に識別できるようにします。リース品であれば、すでに貼られている資産番号やバーコードを利用しても構いません。
すると、管理番号ごとに一覧化された「PCマスタ」を作成することになります。
ここで、
- 使用者
- 貸与日
- 返却日
といった項目をPCマスタへ追加したくなるかもしれません。
しかし、この方法には問題があります。
例えば、管理番号「PC100」のPCを社員Aが返却し、その後、社員Bへ貸与した場合、次のような対応が考えられます。
① 使用者・貸与日を上書きする
過去の利用履歴が失われます。
② 第2利用者、第3利用者…と列を追加する
利用回数に応じて列数が増え、管理が複雑になります。スプレッドシートでは列構成が固定であることが望ましいため、おすすめできる方法ではありません。
③ 新しい行を追加する
同じ管理番号が複数行に存在することになり、「PCは全部で50台」という管理が難しくなります。
④ 一つのセルへ「,(カンマ)」区切りで追記する
検索性が著しく低下し、正確な追記や証跡の確認が難しくなります。
3. マスタと履歴を分ける
そこでおすすめなのが、マスタと履歴(トランザクション)を分離する方法です。
まず、PCマスタには変化しない情報だけを持たせます。
- 管理番号
- 機種
- 購入日
- 状態(使用中・故障・廃棄など)
一方で、別シートとして「貸与履歴」を作成します。
- No.
- 管理番号
- 利用者
- 貸与日
- 返却日
貸与したら、
- 管理番号
- 利用者
- 貸与日
を入力します。
返却されたら、その行の返却日を入力します。
同じPCを別の利用者へ貸与する場合は、新しい行を追加するだけです。
「管理番号が重複してしまうのではないか」と思われるかもしれませんが、貸与履歴はあくまで利用履歴を記録するシートです。
PCの台数そのものはPCマスタで管理しているため、「全部で50台」という情報は変わりません。
履歴だけが増えていくことで、現在だけでなく過去の利用状況も正しく管理できるようになります。
4. GASを使うと入力ミスも防げる
Google Apps Scriptで簡単な入力画面を作れば、
- 現在貸与中のPCは選択できない
- 返却済みのPCだけ貸与できる
- 廃棄済み・故障中のPCは表示しない
といった制御も簡単に実現できます。
担当者は画面から貸与・返却を選択し、利用者を入力するだけでよく、スプレッドシートを直接編集する必要もありません。
5. 応用範囲
この考え方はPCだけではありません。
- ソフトウェアライセンス
- 社用携帯
- タブレット
- 社用車
- 社宅
- 鍵
- 制服
- 各種工具・測定機器
など、「誰が」「いつ」「何を利用したか」を管理したいものなら、ほぼ同じ仕組みで対応できます。
さらに、Googleフォームによる貸与申請や承認フローを組み合わせれば、
- 誰が申請したのか
- 誰が承認したのか
- いつ貸与されたのか
といった証跡も併せて管理できます。
比較的シンプルな構成で実現できるため、他部署へ大きな運用変更を求めることなく、総務部だけで始められる改善アイデアでもあります。
まとめ
貸与物管理は、現在の利用状況だけでなく、過去の利用履歴も残しておくことが重要です。
マスタと貸与履歴を分けて管理することで、証跡を残しながら、スプレッドシートでも無理のない運用が実現できます。
さらにGASを組み合わせることで入力ミスを防ぎ、貸与・返却業務をよりスムーズにすることも可能です。
PC管理だけでなく、さまざまな貸与物へ応用できる考え方ですので、まずは身近な備品管理から試してみてはいかがでしょうか。