1. 部分最適が全体最適とは限らない

例えば、ある申請書が総務へ提出されたものの、不備が見つかったとします。

このような場面では、総務担当者が申請者へ一言確認した上で、その場で修正して処理を進めることがあります。

一方、改善の考え方によっては、

  • 不備があれば必ず差し戻す
  • 申請から承認までやり直す
  • なぜ間違えたのかを説明してもらう

という運用になることもあります。

もちろん、ルールとしてはこちらの方が正しいかもしれません。教育が進めば、不備も減っていくでしょう。

しかし、そのために申請者や承認者が何度もやり直すことになれば、本当に会社全体の工数は減っているでしょうか。申請内容や重要度によっては、総務が数分で修正した方が、全体として効率的なケースもあります。

総務改善では、「正しい運用」だけではなく、「会社全体として最も効率が良い運用」を考えることも重要です。

2. 企業文化はルールだけでは変わらない

企業には、それぞれ独自の文化があります。

本来は営業担当者が行うべき申請や発注を、総務が代わりに対応している会社も少なくありません。もちろん、ルール上は営業本人が行うべき業務です。

しかし、「営業活動を止めないことを優先する」という考え方が会社全体に浸透している場合、その運用が長年続いていることもあります。

そこへ、「ルールどおりに運用してください」という改善策だけを持ち込んでも、現場に定着しないことがあります。

改善には、ルールだけでなく、その会社の文化や優先順位を理解することも欠かせません。

社員たちが会社へ向かって走っていく先で、「ルール」と書かれた分厚い本とチェックリストが×印でその道を塞いでいるイメージ図。ルールだけを持ち込んでも現場の動きが止まってしまうことを表している
ルールを持ち込むだけでは、現場の動きは変わらない

3. 経営と現場の目的が一致しているとは限らない

総務の業務改善は、経営層の判断で始まることも少なくありません。DXやAI活用への関心が高まる中、「何か改善しなければならない」という危機感からプロジェクトが始まるケースもあります。

しかし、現場が同じ温度感とは限りません。経営は変化を求めていても、現場は「今のやり方で困っていない」「余計な仕事が増えそうだ」「自分の仕事がなくなるのではないか」と考えていることもあります。

このような状態では、改善そのものよりも、経営と現場の認識の違いが障害になります。どれだけ優れた改善案でも、目的が共有されていなければ定着しません。

筆者は経営陣から業務可視化の依頼をうけたものの、現場にヒアリングのお願いにいったところ、「何のために来たんですか!」と名刺交換の前に怒鳴られたことがあります。

同じ会社では部長と現場の人が会議の際に喧嘩を始めるなどのケースもありました。

最終的にはヒアリングには協力してもらえたものの、あまり気持ちの良い仕事ではありませんでした。

業務ヒアリングに訪れた担当者が総務部の社員に「何のために来たんですか!」と怒鳴られている様子と、会議室で上司と現場社員が険しい表情で言い争っている様子を描いたイラスト
経営と現場の認識がずれたまま進むヒアリングの現場

4. 総務改善に必要なのは現場とのバランス

総務改善では、

  • 経営の考え
  • 現場の実情
  • 業務ルール
  • システム化

この4つのバランスを取ることが重要です。

理論だけを優先すると現場がついてこず、現場だけを優先すると改善が進みません。本当に必要なのは、現場の運用を理解した上で、少しずつ改善を積み重ねていくことです。

5. このシリーズで紹介したいこと

このシリーズでは、「理想的な運用」ではなく、「現場で本当に運用できる改善」をテーマにしていきます。

Google WorkspaceやGoogle Apps Script(GAS)を活用しながら、

  • 総務担当者の負担を減らす
  • 他部署へ過度な運用変更を求めない
  • 小さく始めて効果を積み重ねる

そんな実践的な改善アイデアをご紹介していきます。

総務の仕事は、人と人、部署と部署の間をつなぐ仕事でもあります。だからこそ、システムだけでは解決できない課題も数多く存在します。

現場に寄り添いながら、無理なく続けられる業務改善を一緒に考えていきましょう。