1. AIブームは昔の「パソコン導入」に少し似ています

近頃はAIに関するニュースを見ない日がありません。

  • 「AIを導入すれば業務が劇的に変わる。」
  • 「もうSaaSはいらない。」
  • 「プログラマーがいなくてもシステムが作れる。」

そんな話も耳にします。もちろん、AIが仕事の進め方を大きく変えるのは間違いありません。

しかし、総務の立場からすると、まず最初に思うことがあります。

「結局、何をすればいいの?」

2026年に入り、「SaaSの黙示録」という言葉が話題になりました。Claude Codeのようなアイテムが非常に高い開発能力を持ち、多くのSaaSが不要になるのではないか、という議論です。ニュースをご覧になった方も多いでしょう。

すると当然、「うちもAIを導入しよう」という話になります。そして、その話が回ってくる先は、多くの場合、総務や情シスです。

これは昔、「パソコンを買えば何でもできる」「インターネットにつながれば全部解決する」と言われていた頃と少し似ています。

当時の担当者なら、「パソコンを買っただけでは何も始まりませんよ。」と思った経験があるかもしれません。

AIも同じです。導入すること自体が目的ではありません。何を改善したいのか。そこが決まって初めてAIは力を発揮します。

2. とはいえ、AIは昔よりずっと優秀です

昔との違いもあります。AIは想像以上に多くのことができます。

文章を書き、画像を作り、プログラムを書き、議事録をまとめ、ホームページまで作ってしまいます。

だからこそ、「全部AIに任せればいい」と思ってしまうのも無理はありません。しかし、現場では少し違う景色が見えています。

3. 「結局GASがありがたい」という話

ある企業の情シス責任者がこんなことを話していました。

「結局、GASで作ってくれるのが一番ありがたいんですよ。」

最初は少し意外でした。Claude Codeがあれば何でも作れる時代なのに、なぜでしょう。

理由はシンプルです。社員全員が自由にAIを使い、ある人はPython、ある人はExcel VBA、ある人はローカルアプリ、ある人は独自ツール……という状態になると、管理する側は大変になります。

  • どこにデータがあるのか
  • 誰が保守するのか
  • 退職したらどうするのか
  • セキュリティは大丈夫なのか

総務や情シスが気になるのは、実はこの部分です。

Google Workspaceを利用している企業であれば、Google Apps Scriptで業務改善を進める方が、権限管理や共有、保守の面で扱いやすい場面も少なくありません。

社員それぞれが自由に使うAIツールから会社のデータがクラウド上へ流出し、鍵の開いたパソコンの背後で釣り竿を持った不審者が社員証を釣り上げようとする一方で、割れたセキュリティシールドの前で頭を抱える担当者のイメージ図
社員が思い思いのツールを使うほど、データの所在やセキュリティの管理は難しくなる

4. AIは魔法ではありません

Claude Codeは非常に優秀です。ですが、魔法ではありません。既存の技術を組み合わせ、人間が行ってきた作業を効率化してくれるツールです。

PowerShellを実行したり、HTMLを書いたり、Pythonを書いたり、Google Apps Scriptを書いたり。こうした作業を、日本語で指示できるようになったと言った方がイメージしやすいでしょう。

だからこそ、会社として重要なのは、「AIを導入したか」ではなく、「どこで動く、誰が管理できる仕組みを作るか」なのです。

5. 最初のAI活用は小さな成功体験から

AIを導入するなら、最初から大規模なシステムを作る必要はありません。例えば、

  • 社内FAQをAIに回答させる
  • 会議の議事録を自動作成する
  • ホームページや社内資料のたたき台を作る
  • Google Apps Scriptで小さな業務を自動化する

こうした身近なところから始めるだけでも十分です。成功体験が積み重なると、「AIをどう使えばいいか」という感覚が自然と身についてきます。

社内FAQ・問合せ対応、議事録の自動作成、ホームページ作成、社内ツールを自動化という4つの身近な活用例とともに、安全に使える・誰でも使える・時間を生み出す・業務が改善するという効果を示した、担当者とAIキャラクターが並ぶイメージ図
最初の一歩は、身近で小さなAI活用から

6. AIを管理することも総務の仕事になるかもしれません

これまで総務や情シスは、新しいシステムを導入するとき、RFIやRFPを作成したり、相見積もりを取得したり、セキュリティや運用方法を確認したりしてきました。AIの時代になっても、その役割は変わりません。

むしろ、社員一人ひとりが簡単にツールを作れる時代だからこそ、「そのツールは安全なのか」「社内ルールに沿っているのか」「誰が保守するのか」という視点が、これまで以上に重要になります。

AIそのものを管理するのではなく、AIを安全に活用できる環境を整えること。それも、これからの総務の役割になっていくのかもしれません。

まとめ

AIは確かに便利です。しかし、本当に重要なのは、AIを導入することではなく、業務を改善すること。そして、その改善が継続して運用できることです。

派手な技術に目が向きがちな時代ですが、現場では「誰でも使える」「保守できる」「安全に運用できる」という視点も欠かせません。

AIを使いこなす時代だからこそ、総務の役割はむしろ広がっていくのかもしれません。